はじめに
第75回美学会全国大会が2024年10月12日(土)・13日(日)・14(月)に大阪大学中之島センターで開催されました。美学会で初めて発表する若手研究者のために第65回大会以来、美学会と当番校の共催企画として開かれています「若手研究者フォーラム」も、今年で11回目を迎えました。今回も意欲的な発表が集まりました。以下は、発表者の任意による投稿のなかから、ある程度の水準に達しているものを論文として掲載した報告集です。若干の字句の修正や書式統一のための処理を行った部分もありますが、原則的には、発表者から送られてきた原稿をほぼそのまま掲載しました。「若手」研究としての性格上、多少の不備があるかもしれません。その点につきましては、各発表者による研究の進展を待つことにして、ここでは発表時の原形を伝えることを第一の目的としました。「若手」らしい、新鮮な着眼点や問題意識、鋭敏な直感や大胆に越境する想像力などを感じ取っていただければ幸いです。
美学会「若手研究者フォーラム」委員会
委員長 瀬尾文子
目次(個別PDFのダウンロード)
タイトルをクリックすると、発表者ごとの「報告論文」(PDF形式)を閲覧できます。
カント「天才」概念発展史に関する一考察
——「精神 Geist」概念に注目して——
倉橋知佳子
中期ハイデガーの芸術論における「全体における存在者」とは何か
木下由裕
ヴァルター・ベンヤミンにおける注意Aufmerksamkeit 美学
——注意力の形式化としてのメディア論にむけて——
木戸吉則
シモーヌ・ヴェイユの天才論
——「人格と聖なるもの」における古典的美学の揺さぶり
日下雅貴
ミシェル・フーコーの「生存の美学」はどのような美学か
——ニーチェの美学思想との比較から
仲宗根大介
ノヴォトニーとメルロ゠ポンティにおけるセザンヌの生と絵の関係
井ノ上薫
現代中国における日本文化の受容
——「かわいい」美意識を中心に——
孫凌波
個別のスポーツに対するスポーツ美学の応用
——野球の文化的背景で語られる「美的性質」をめぐって
根岸貴哉
組立説明図の研究
——プラモデルと建築の図面(説明図)の比較を中心に——
林浩平
1970年代の高松次郎「平面上の空間」シリーズ作品におけるポール・セザンヌからの影響
岩渕夏樹
マチュウ・コプランが構想する「マニュフェスト・ペーパー・エキシビションズ」
——形式の革新的再物質化としての『パーフェクト・マガジン』(2003)に着目して
遠藤萌
パフォーマンス作品の再演における「ラディカルさ」の喪失と再出現
——マリーナ・アブラモヴィッチによる《Lips of Thomas》の再演
大磯日向子
仮名の書の美
——『源氏物語』における筆跡描写に即して——
加瀬佳樹
1970年代における山口勝弘の創作実践とその解釈について
——ビデオによる「コミュニケーション」の実現
伊澤文彦
『寝ても覚めても』と『ドライブ・マイ・カー』におけるアダプテーション手法
——「往還」する行為を中心に
瀬古知世
19世紀初頭のドイツ語圏における音画概念
——コッホ『音楽事典』にみるその両義的評価——
柴田蒼良
武満徹の「音色」をめぐる創作プロセスの考察
——「夢」シリーズと映画音楽の関係を中心に
髙畑和輝
モーリス・ベジャール作、バレエ『THE KABUKI』(1986年)
——文化転移による伝統の変容と、散りゆく桜の美学に関する考察
田邉和可子
自然音の音楽的な聞こえについて
——音響的期待の観点に基づく試論——
岡崎峻
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